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メール・マガジン
「FNサービス 問題解決おたすけマン」
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★第046号 ’00−06−02★
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心の測定
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●「クレペリン」
なんて耳にされたこと、あるのではありませんか?
昔は高卒就職希望者などに、<職業適性検査>として広く行なわれておりました。
横長の紙に何行もの数字が並んでいて、「用意、、始め!」で足し算をするやつ。
1分ごとに「ハイ、つぎ!」と声がかかり、つい夢中にさせられてしまう、あれです。
*
正しくは「内田・クレペリン式精神作業検査法」。 「クレペリン」とはドイツの
精神病理学者エミール・クレペリン(1856〜1926)、この技法のもとになった
<連続加算法>を考案しました。 それを人格検査法に仕上げたのは内田勇三郎
(1895〜1966)で、1920年代から臨床的研究を加え、実用化されました。
内田先生には8人のお弟子さんがいた由。 先生が亡くなられた後、それぞれの
<流派>に分かれたそうです。 骨組みは同じでも、肉付けが多少違うんですな。
ご存知でない方のために、その方法の概略を説明しますと、
隣り合った(ひと桁の)数字2個を足し、その答の1の位の値を<2個>の間に
HBの鉛筆で書き込む、という単純な作業。 「ハイ、つぎ!」の声で、その行
は終わりとし、次の行に移る。 普通の能力では1分間で計算しきれないだけの
数字が並んでいますから、常に行の途中で<諦めさせられる>形になります。
5行ほど練習、一旦休憩して本番に入ります。 まず前段15行、15分間連続
の計算作業。 そこで5分間休憩し、後段の15行へ進みます。 後段を10行
とする流派もあり、さらにプラス1行、僅か数秒間分を加える流派もある。
ともかく合計40分ほどで<作業>はおしまい。 あとは専門家による作業結果
の判定です。 まず各行、加算に用いられた最後の数字を赤鉛筆でつないで行く。
と、ジグザグした横倒しの折れ線グラフが出来ます。 これを<読む>のです。
その読み方に流派ごとの特徴があり、たまたまサーモスタット屋の適性判別には
(あちこち遍歴の後に巡り会った、そして先頃亡くなられた)F先生の的中率が
抜群でした。 卦の立て方は同じでも、出た卦をどう読むか、それを手がかりに
何を言い当てるか、の得意分野が易者ごとに違うようなものでしょうな。
* *
折れ線グラフの形を大別すると、一般健康人の健常曲線(定型)と精神病質者の
異常曲線(非定型)。 その中間のを、(移行型)などと呼んだり。
何が<健常>か、については後回し。 言いたいのは、この技法が<異常者>の
検出や判別に使える、ということ。 バスジャック少年に外泊許可を出した医師が
どんな方法を用いたのか知りませんが、私の限られた知識や体験からも、この
技法を用いていたら、少年は「出して良い」状態とは判定されなかったろう、、、
普段は文句ない働きぶりなのに、何故か時たまポカをやらかす、機械作業で怪我
をする、という程度でも容易に判別できるのだから、あれほどオカシイのは当然、
<非定型>と見て取れるはず。 しかも前記の通り、時間、器材、消耗品、どれも
たいしてかからない。 この検査、あの病院では採用していないのかな?
故F先生は、精神病院で患者を帰らせて良いかを判別する際にも用いると言われ
ました。 後段の平均作業量が前段のそれを上回らない場合は、「未だダメ」。
簡単です。 問題の少年たちはどうなのか、今からでも調べてみて欲しいな。
* * *
<異常>が分かるのは、<正常>のパターンがどんなものか、分かっているから。
判定方法は流派によって異なるかも知れないが、故F先生の話を要約すると、
1)作業量:
(当時の統計では)1分あたり、「中学卒で40、高卒で60、大卒で80」が
目安。 最近話題の<分数計算が出来ない大学生>だといくつくらいか、大いに
興味ありますな。 作業量があまりに低いのは、とにかくオカシイ、ということ。
2)初頭努力:
「始め!」と言われたら、ソレッと取りかかるのが普通の心理。 1、2行目は
飛び出す、それが正常です。 しかし「何でこんなことヤラナキャならない?」
かどうか、急には調子が出ない人もいます。 そこに<心のクセ>が表われる。
3)疲れ:
単純な作業でも、続ければ疲れる。 作業量は減って行きます。 頑張っても、
グラフは次第に<低下>傾向。 人間としてはそれで正常なのです。
4)デコボコ、あるいはバラツキ:
気が乗ったり乗らなかったり、僅か15分の間にも波が生じます。 毎行、必ず
同じところまで行くのはロボット。 <コンスタントでない>のが人間の証明。
5)計算の誤り:
ひと桁数字2個の足し算、間違わずに出来て当然ですが、焦って錯覚したり書き
違えたり。 これも<人間的>現象。 訂正には消しゴムを用いず、横棒1本、
その脇に正答を書き加えること、と作業前に説明するのですが、、 中には黒々、
ダンゴで消す人も。 誤答にも平然、訂正などせずに作業量を稼ぐ人もいます。
それらも、その人の特性の表われ、というわけ。
6)文字の形や濃淡:
キチンと書く人もいるし、乱暴に書きなぐる人もいる。 同じHBでも、筆圧の
違いで、全体に濃く見えたり、薄く見えたり。 それがまた、心のクセを物語る。
7)学習効果:
前段15行の作業で、要領が身に着く。 疲れはするが、5分間の休みで回復し、
後段は前段に比べ10〜15%、平均作業量が増すのが普通。 毎分の作業量が
100にも達する人、逆に全然進まない人の場合は、それほど伸びないと言うが、、、
* * * *
前記<退院テスト>で「未だダメ」というのは、7)からすると、疲れが回復し
ないか、二度目は努力しないか、学習力が無いか、それらの複合か。
ある種の犯罪常習者において<再犯率が極めて高い>のは、<努力>もしない、
<学習>効果の生じないタイプだからかな?
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●その道の専門家でもない私
が、<ひと様>の測定方法について解説を試みるのは多分に身の程知らずだとは
百も承知です。 が、敢えてそうするのは、
<ひと様>たちの間に立ち、<ひと様>の手を通じて業績を挙げることを使命と
する管理職において、何らかの<測定手段>を持たなくてはなるまいと思うから
です。 「測定なくして管理なし」でしょ?
で、あなたはどんな<手段>をお持ちですか?
*
もし「未だ、、」なら、私は自分の体験にもとづいて、<F先生方式>をお奨め
します。 世の中に<手段>は色々あり、<クレペリン>だけでもいくつかある。
どれを用いられるのもご自由であることは申すまでもありませんが、まず試して、
効果を実感しないことには、、、
ご興味あれば、たとえば
Yahoo! で「精神科学研究所 V−CAT」と入力してみて下さい。 お世話になった故F先生と同姓の方が所長となっておられること、
日本能率協会の取り扱い品目に加わえられていること、などが分かります。
* *
かつてはF先生のお弟子さんが検査用紙を携えて来社・実施。 旬日の後、先生
直筆の判定結果が郵送されて来たものでしたが、やがてデータベース構築が進む
と共に、機械出力のものになりました。
聞いた話では、今や<説明><号令>はカセット・テープ化され、その作業結果
をファクスすると判定結果もファクスで来る、、。 迅速化されているそうです。
暫くご無沙汰なので、<今>どんな判定形式が用いられているか知りませんが、
<F先生方式>は、大まかな分類が示されるのが特徴的、かつ応用に便利でした。
即ち作業量でAからEの5段階、クセの強さは(折れ線の崩れ方で)1から8、
これらを併せて<精神健康度>を高(H)、中(M)、低(L)に大別します。
A−1からB−4までがH群、A−5からB−6及びC−5までがM群、その先
はL群、Eや8の人は<別格>、という段階的類別。
それとは別に、折れ線グラフの<姿>で、性格類型16分類のどれに該当するか
を見ます。 その判定の示し方もグラフ的。 x軸は<情動性>、y軸は<欲動
性>とし、それぞれプラス傾向とマイナス傾向の4象限。 その各象限をさらに
4分割し、この放射状16本の線に当てはめて、その人の行動ぶりの特徴を説明
する仕組み。 それが職業適性の判定にもつながります。
* * *
人間は、フレキシブルと言うべきか、不安定と言うべきか、よく変わるものです。
私の場合、作業量の<A>は維持するが、崩れ方はおおむね<4>、不調な時は
<5>。 つまり、普段は<H>なのだが、間違うと<M>になってしまう。
性格としては分裂質鋭敏傾向の第1象限0傾向、略称<1−0>。 それが能力
発揮を妨げられる状況を強いられたりすると、知らぬ間に対角線上<3−0>へ
移ってしまうんですな。 ところでこの<3−0>、とにかく製造業には不向き、
我が社では決して採用しないことにしていました。 社長自ら不適格とは、ね!
能力発揮の機会は自分でいくらでも作れたのですから、<3−0>になったのは
特殊事情。 (前に述べた)Y県での工場新設の際、現地に身を置けば本社工場
が気にかかり、本社にいればまた、、、 真面目さ故に少々オカシクなったわけ。
何せ小企業が社運を賭けた新工場。 失敗はゼッタイ許されない、、で、本気に
なりすぎたようで。 ある日「こりゃ自殺するかも、」の気分。 即刻F先生に
相談したところ、何と「するでしょうな」。 まあ、ニベも無いお答え。
「F先生にしてこのツメタさ、、?!」、つまり、自分で解決するしか無い、と
いうお示しだな、、 そのくらいに解釈する正気が残っていたのが幸い。 以後、
本を読み瞑想に耽り、心の鍛錬に励んで、、 めでたく<1−0>に戻りました。
* * * *
他方式に比べ理系的明快さがあり、それを目安に自己管理が可能、、 という点
を説明するための身の上話でした。 お許し下さい。
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●ひと様を率いる管理職が
自分のこともワカラナイでは話にならない。 また、相手の本質を知ることなく、
適切なリードは出来ません。 さらに、Rational Process を駆使するにも、こう
した<別の手段>でなければ得られない種類の基本情報が必要、
と考えて、その一つをご紹介したわけですが、<心的測定手段>は今や管理職に
必須です。 分社化や成果主義的運営で、いずれ部署別随時採用方式に移行する
であろうからです。 その時、あなたにどんな人材選定手段があるか?
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これまでは配属されて来たデコスケ君か、彼を採った人事担当を呪ったでしょう。
今後はあなたの判断で採用し、その結果に責任を負わなくてはならなくなるかも。
うっかりヘンなのを採れば、たちまち自分自身を呪う結果になる、、、。
しかも当今、<良き>人材を得ることは難しくなる一方。 ならせめて、基本的
にオカシイ人を採らない。 そして採った人には「どうしたら、より良く能力を
発揮してもらえるか」で、常に心を用いること。 それにおいて、
あなたの経験、カン、度胸にものを言わせるのはご自由ですが、多少とも客観性
のあるデータを持たないことには、当たり外れが大きい。 そしてデータを得る
には、それなりの技法が必要だろうと、、、。
* *
実は<クレペリン>技法、その時そうは申しませんでしたが、すでに遙か以前、
第8号の末尾で予告めいたことをしてはいるのです。 即ち、
「そしてリーダーたるあなた、ジコチュウであることは決して許されませんぞ。
問題解決のリーダーが<問題>を生産するなんて、自己矛盾ですから。
じゃ、どんな方法で? と訊きたいでしょうね。 実は私もお話ししたい。
たとえ万能ではないにしろ、それを可能とする技法は<ある>からです。
が、それはまた先の話にしましょう。」
その<先の話>を今回させて頂いたことになりますが、これまた奥の深い世界。
続く何回かもこれにからめることになるでしょう。 悪しからずご了承下さい。
■竹島元一■
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